携帯電話から金が回収できるのはご存知かと思いますが、なんと下水汚泥からも金がとれる!?
錬金術ならぬ便金術か!そんな技術がアメリカで注目されているようです。
下水汚泥には金が大量に混じっている?
汚水から金を取り出すことができて、しかもそれが事業として見合うかもしれない…。アメリカ化学会で地質研究所のスミス氏(Kathleen Smith)が報告しました。
いつ下水に金が混じったのか?
普通の人は金を直接食べないので、トイレから排出される下水に金が混じることはなさそうです。正月に飲むような金箔入りの日本酒を普段からガバガバ飲むような人であれば、その家庭のトイレからは多少の金が混じることになるかもしれませんけど・・・、そんな人はほとんどいないでしょう。
貴重金属はいろいろなものに使われている
そうなると、トイレの排水以外の生活排水に貴重な金属が含まれていることになりそうです。事実、スミス氏はプレスリリースで、「ヘアケア製品、洗剤、悪臭防止靴下などのナノ粒子にも貴重金属は含まれている」と発表。衣類の洗濯やお風呂のヘアケアなどで流れ出る生活排水には、金やパラジウム、バナジウム、プラチナ、銀などの貴金属が、ごくごく少量ですが含まれているらしいです。
ごくごく少量の金属でも集まれば凄いことに!
アメリカのアリゾナ州立大学の研究によれば、およそ1トンの下水から0.3グラムの金を抽出することができるようです。アメリカ人の1人が1年間に排出する生活排水から抽出できる、金、銀、プラチナなどの推定価値は約13ドル。小さな金額のようですが、100万人が住む大都市であれば、13,000,000ドル相当の貴金属が回収できるということです。
もし日本人の生活排水から貴金属を抽出すると
では日本はどうでしょうか?日本下水道協会によると、平成20年度の汚水処理で生じた汚泥は日本全国で計220万トン。一人当たりで考えるとアメリカ人よりも少ないことにちょっとだけ安心しますが、220万トン×1560円(13ドル×120円で換算)で、なんと34億3200万円の貴金属が回収できることになります!
こんな興味深い論文が世に出てこないことも…
今回の論文が注目された背景には、回収コストから考えて、決して夢物語ではない。という点が注目されたのだと思います。しかしながら、こんな素晴らしい論文、当初はあまり注目されていませんでした。なぜなら当初の論文のタイトルは、「都市バイオソリッドにおける金属含有率およびその潜在的回収可能性」。タイトルが難しすぎたようです・・・。
後日メディア向けに出したプレスリリースのタイトルは、「下水(そう、ウンチ)は貴金属や重要元素の供給源にも」。このリリースはアメリカで大反響となりました。素晴らしい発見も大切ですが、それを発信する「言葉」も同じように大事だということですね。言葉を磨いて発信していくことの大切さも勉強になりました。